未知なるクルド世界の案内人、ワッカスさん
「あなたは何人ですか?」と海外にいたら結構聞かれる質問。「(日本国籍だから)日本人です」と見た目もアジア系だし、日本という国も結構知られているので、「How are you?」と同じ熱量で返答してます。しかし、今回お会いしたワッカスさんが放った「クルド人です」という言葉には、自分にはない誇りと確かな意思が感じられました。
日本初で唯一のクルド料理レストラン

ワッカス・チョーラク(Vakkas Colak)さんは、JR埼京線十条駅の目の前という好立地にあるクルド料理レストラン「メソポタミア」のオーナーです。店内にはクルドの旗をはじめ、銀細工などクルドの関連品が並び、濃紺に染まった壁から視線を窓に移せばビル夜景でなく、砂漠が見えてきそうな異国情緒が感じられます。

ワッカスさんとのご縁は、私が所属する団体「Lunch Trip」のイベント関係で。各国や文化に通ずるガイドさんを招き、パッセンジャーことイベント参加者の方々と一緒に色々学んでいこうという活動をし、そのとき取り組んでいたテーマが「日本にいるクルド難民の子どもたち」でした。
知れば知るほど奥が深い、クルド人

西アジアのチグリス川、ユーフラテス川に起源を持つクルド人は、「国を持たない世界最大の民族」と認識され、その人口は3,500~4,800万人ともいわれています。多くがトルコ、イラン、イラクなどで暮らしていますが、迫害や差別を受けることもあり、ヨーロッパやアジアに移住することも。
複数の国にまたがって暮らしているため、クルド語も住む国によって方言のように言葉が多少変わります。そして、宗教についても多くがイスラム教徒ですが、厳しい戒律はなく、キリスト教、ユダヤ教、民族宗教のヤジディ教を信じる人もいるなど、知れば知るほど「クルド人ってどんな人なんだろう?」「どんな人をクルド人と呼ぶんだろう?」と、自分では掴めない、霧のような存在だと思い始めました。
クルド文化の認知度向上に取り組むワッカスさん

そこでクルド料理を取材しようとメソポタミアを訪れる、同じ団体スタッフについていき、ワッカスさんとお話ができたのです。ワッカスさんはトルコで生まれ、マレーシアで教育を学び、現在も東京外国語大学でクルド語の講師を務めるなど、多岐にわたって活躍中。
さらに、初となる日本語によるクルド語辞書を編纂した経験も持っていて、それもすべては少しでもクルドのことを日本で知ってもらえるように。流ちょうな日本語の奥底には、切なる願いが秘められています。
流されず、固い意志のもとで繋いできた文化

メソポタミアは、羊や鶏肉を串焼きにしたケバブ、甘いパイ菓子のバクラヴァ、極めつけはカラフルな色彩が散りばめられたトルコランプなど、クルドのことを知らない人からしたらトルコ色を強く感じますが、それもそのはず。トルコは様々な民族が集まった多民族国家なので、そこにはクルドの要素も含まれているのです。

だからこそ、「トルコ料理に似てますね」という言葉にも、「いえ、これはクルド料理です」と素早くワッカスさんは応えます。また「言葉や宗教でも共通点がないクルド人の方々は、何を思ってご自身をクルド人だと認識されるのですか?」という問いには、「文化です。クルド人にはクルドの文化があります」と即答。
その言葉に宿る確固たる想い、そして文化という見えないものに潜む危うさ、脆さにハッとさせられました。自分たちが意識して繋いできたからこそ、ほかの文化に同化や吸収されず、続いてきた文化。担い手の意思に託されるからこそ、トルコ人ではなくクルド人だと言い切るワッカスさんの目はまっすぐで、圧倒されます。
違う考えの人たちとつくる、これからの世界
色々なニュースを見てると、男性や女性、アジア人に白人や黒人と違いを示す言葉が飛び交っていて、そんな違いを際立たせる名称は捨てて、みんなが一人の人間を意味する「ひと」で良いじゃないかと面倒くさがり屋の私は思ってしまいます。
でも、その違いを大切にしている人も確かにいる。自分が自分であるために、これがあるから自分だと言えるもの。自分が誰かを知っているからこそ、ワッカスさんの足場は固く、目指す先も迷いがありません。

文化や民族などを通り越して、自分とは違う考えを持つワッカスさん。それでも応援したい気持ち、もっと知りたいと思うのは、彼が本当に自分たちの文化を大切にしている、誇りを持っていることが伝わってくるから。違いを尊重し合える世界に欠けていい人はいません。
<メソポタミアの基本情報>
住所:東京都北区上十条1-11-8 3階
電話番号:03-5948-8649
営業時間:11:00~23:00
定休日:月曜
アクセス:十条駅から徒歩2分
https://mesopotamiajp.jimdofree.com/
【PEOPLE】ホテルの新しい姿を模索する、並木さん・力丸さん
自宅が仕事場に、スーパーがレジャー施設に、そして旅行はダイヤモンドのような希少なものと化した2020年。多くの人たちが、“これまで”と“これから”を意識させられたのではないでしょうか。変わったものは何も私たちの生活だけではありません。そのなかには旅行者を受け入れていたホテルも。

今回、「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」で働く、並木さんと力丸さんのもとへ。ホテルは新宿駅南口から徒歩3分の場所に所在し、そのアクセスの良さから東京を訪れる国内外からの旅行者に重宝されてきました。
ホテルなのに宿泊しない!?新プラン
実は小田急ホテルセンチュリーサザンタワーは、2020年8月より新しいプラン「デイユースプラン」をリリース。それは従来の宿泊というホテルのサービスから脱却し、テレワークやワーケーションが謳われる環境に合わせて誕生したもの。最大12時間滞在できる9~21時のほか、最大6時間の9~15時、13~19時の3種類から滞在時間が選べます。

“東京ならではの景色を堪能しながら、高層階に自分だけの仕事場を持つ”…そんな夢が叶うのが、このプランの魅力。さらにデイユースプラン限定でレストランから熱々の食事を届けてくれるサービスなどの特典も多数。ルームサービスがなかったホテル側にとっては画期的な、利用者にとっては便利なプランになっています。
どの方角からも望める東京の街並み
19㎡のスタイリッシュなシングルルームは、ひとりで利用するには十分な広さ。ナチュラルカラーの家具に囲まれた空間に身を置けば、リラックスもできて、仕事のアイデアも浮かんできそう。また冷蔵庫・電気ポット・バスルームも完備で、部屋にこもって作業に集中できる環境が整っています。

作業に煮詰まったり、ひと休みしたりする際は、「ぜひ視線を窓の外へ向けてみてください」と広報担当の力丸さん。地上100m以上に位置しており、普段とは一味違う景色は心身ともにリフレッシュされるはず。

夕焼けなどホテルで見られる絶景を自ら撮影し、ホテルのインスタグラムに投稿することも
「昨年までフロント業務に携わっていたのですが、地上100mからの風景を見ながら仕事をするのが好きでした」と、自分の宝物を紹介するように窓から見えるエリアや建物を丁寧にひとつひとつ教えてくれました。

1名で利用する際、客室は新宿御苑や東京タワーなど都会らしい風景が特徴の東側もしくは、代々木公園が望める開放感たっぷりな西側のどちらか。2名の場合は西側もしくは、西新宿と東新宿を一望できる北側の客室になります。

良い写真が撮れるように細やかな気配りをしてくださる姿はさすがホテルマン
「空気が澄んだ冬も景色が綺麗ですよ。ホテルの周りには高い建物がないので、遠くの方まで見渡せます」と、同じく広報担当の並木さん。デイユースプランは2020年12月末まで利用可能なので、定期的に訪れて季節ごとの風景や変化を見つけてみるという楽しみ方もできます。
作業の効率化を後押ししてくれるアイテム

横にのびたデスクは、ノートパソコン・資料・筆記用具を広げても、まだまだスペースは十分。近くにはデスクランプや電源もあるので、使いやすいです。

AIスピーカーが普及し始めた2019年に、小田急ホテルセンチュリーサザンタワーはホテル業界でいち早く全客室に導入。天気や観光情報を案内するほか、枕など客室のリクエストもスピーカーを介することでスピーディーな対応が可能になりました。ほかにも音楽を流すなど、使い方はさまざま。この機会に、仕事の助手として使ってみるのも、このプランならではの楽しみ方です。
デイユースプラン最大の魅力が「食事」

そして、デイユースプランの見どころといえば、このプランを利用した人のみ利用できるデリバリーサービス。朝食にぴったりなデニッシュをはじめ、ランチや軽食にぴったりなメニューが勢ぞろいしています。

実はオープン当時からルームサービスを実施せず、食事をとりたいときはレストランやラウンジに行くのがホテルのスタイルでした。しかし、デイユースプランだけは特別に客室に届けてくれるので、部屋から一歩も出ることなくホテルの食事を味わえるのです。

おすすめは、季節の野菜が彩りを添える「スパイシーカレー(ライス付き)」。以前はレストランにはなく、パーティーメニューのみで提供していたカレーは、リピーターさんからリクエストが来るほどの隠れた人気メニューだと聞きます。
ホテルならではの香料が効いたカレーに、とろっとろになるまで煮込まれた牛肉が加わって、ライスがすすみます。またパソコンの作業がしやすい、「ライ麦パンのアメリカンクラブハウスサンドウィッチ」も人気の一品です。

甘いものが欲しいときは「シェフパティシエ特製 季節のティラミス」を。夏は抹茶ベースの和のテイストで、さっぱりとした甘さのなかにマスカルポーネのクリーミーさが絶妙。カップの底に辿り着けば、柑橘類の後口さっぱりな酸味が加わり、一品で様々な味覚を堪能できます。
部屋の外で食事したい人にも特典あり

また食事の時間に場所を変えることで気分転換したい人も少なくないはず。デリバリーという特別サービスのほか、「サザンタワーダイニング」で優待を受けられるといった食事に関する選択肢が多いのも、このプランの嬉しいポイントです。

カウンター席もあるバルでは、おひとり様でも過ごしやすい環境。目の前に広がる東京の大パノラマを見ながらぼーっとする、そんな至福のひとときを過ごせます。
時代に見合った新サービス・プランを
従来のサービスとは異なる、今回のプラン。「色々な可能性を模索しながらも、お客様に最善なサービスを提供し続けていきたい」と、オープン当時から働く並木さんが力強く話します。
「ホテルは、お客様がご家庭のように寛げる場所であると同時に、非日常の空間も楽しんで頂ける場所。それを両立できるのがホテルだと思っていますから」

その言葉通り、プランはビジネス需要の枠を超え、バスターミナル「バスタ新宿」で長距離移動する人たちの束の間の休息場所として、またお子さん連れの方々が周囲を気にせずお喋りできる場として、様々な用途で使われています。
変わらないからこそ変わるもの

実はホテルの入り口に「歩み入る人に安らぎを。去り行く人に幸せを」のラテン語が刻まれています。教えてもらわないと決して気付かないメッセージは宿泊客ではなく、むしろ従業員に向けてのよう。「私がホテルで一番好きな場所です」と言った並木さん。そして、傍らで頷く力丸さんの姿からは全社員の気持ちが感じられました。
世界は否応なく変化を求められていて、それは私たちも同じ。しかし、根本となる核が確固であれば、変わらないものもあります。新たなサービスを生み出し続ける小田急ホテルセンチュリーサザンタワーですが、その源に訪れる人たちへの想いがある限り、“これまで”も“これから”も変わることなく、私たちにエールを送り続けてくれます。
<小田急ホテルセンチュリーサザンタワーの基本情報>
住所:東京都渋谷区代々木2-2-1
電話番号:03-5354-0111
アクセス:新宿駅南口より徒歩3分
https://www.southerntower.co.jp/
【PEOPLE】始めの一歩は地元愛、美葉子さん
出生地や育った土地を自ら選ぶことは難しい。
そうなるとその場所との関係は“ご縁”の一言に尽きて、だからこそ地元を愛する人に私は惹かれる。
静岡県修善寺温泉で出会った美葉子さんは、まさに修善寺の申し子と言いたくなるほど修善寺の文化や雰囲気が温泉のように彼女から溢れていました。

地元に戻った美葉子さん
生まれも育ちも修善寺。
山に囲まれた温泉街には数々の著名人が訪れた歴史があり、中央を流れる川の音が優しく辺り一帯を包む。物心つく頃から、この環境が普通だった美葉子さん。彼女の生い立ちを聞くだけで、何か物語が始まる予感にワクワクしてしまう。
芸術家の両親を持ち、自身も大学ではデザインを学びます。そして、久し振りに地元に帰省。

「通りにはシャッターが下がってるお店が多く、漠然とこの先ここはどうなるんだろうと思いました」と、
話す美葉子さん。賑わっていると思った地元の町並みが悪い方に変化していた。その事実を目の当たりにした時、彼女の心には既に一つの想いがありました。
「修善寺が盛り上がることがしたい」
地元が何よりも育てたのは彼女の地元愛かもしれません。想いが生まれた数日後には空いていた現在の店舗を借りることになります。そうして2017年6月、修善寺 燕舎(つばめしゃ)はお土産屋さん、ギフトショップとしてオープンしたのです。

店内には美葉子さん自らデザインしたおみやげのほか、地元在住クリエイターさんたちによる刺繍雑貨や木で作った日用品が並び、今でも幅広い分野の芸術家が集まってくる修善寺温泉の性質が窺えます。
まずは取り組んでみること

大学卒業後、最初の仕事として自分の店舗を持った美葉子さん。商品を準備したり、手続きをしたり。オープンしたと思ったら、それは新たなステージの始まりで、今度は売り上げという課題も出てくる。思わず「躊躇しなかったのですか?」とその果敢な姿に賞賛しつつ、水を差す質問をしてしまった。
「大学でプロダクトデザインを勉強していたのが役立ちました。そこでは試験的にまず作ってみて、様子を見ながら対応することを学んでいきます。なので、始めることは大きなことではないんですよ」淡々と話しますが、知識や気持ちが行動に結びつけられるどうかは別問題です。

もし流れが速い川を前にして多くの人が立ちすくんでも、きっと美葉子さんの手には高跳びの棒が既にあるような。その驚くほど軽やかでしなやかな身のこなしは間違いなく彼女の武器です。
つばめに秘めた願い
店名の燕舎は春に毎年修善寺温泉を訪れるつばめから。
このつばめのようにお客様もまた修善寺に帰ってきて欲しいという願いが込められています。

つばめのように戻って来て、改めて修善寺の良さを実感した美葉子さん。
今度は新たなつばめたちを迎えようと居心地よい空間を作ります。
地元の人も立ち寄る場所へ
趣ある修善寺温泉が凝縮したような古い家具が店内に置かれていますが、これは美葉子さんがご実家で見つけてきたもの。修善寺温泉で時を刻んだものだからこそ、お店にも自然と馴染みます。

玄関のそばには、会話する時にぴったりな椅子も。これは地元のおじいちゃん、おばあちゃんが気楽に立ち寄って話せるように準備したもの。地元同士のつながりが増えれば町も活気づく、だからお店があることで出掛けるきっかけになってほしいと燕舎は地域コミュニティの場という一面も目指します。

地元の人たちも手土産になるように、そう意識して美葉子さんはおみやげをデザインしています。いかに自分たちが素敵な場所で暮らしているのか、きっと嬉しいような照れるような気持ちにさせてくれるはず。観光客はもちろん、地元の人たちも美葉子さんにとっては大切な人たちなのです。
彼女のストーリーは続く…

地元を盛り上げたいという想いでお店を始めた美葉子さん。お店ではなく町全体を見据える広い視野の持ち主は多くの人たちと協力し、“やりたいこと”を実現していきます。
例えば、手作り作品を集めた青空市場、修善寺温泉だるまっ子市を企画。達磨山(だるまやま)の麓に修善寺温泉があるため、この地域で育った子供たちは“だるまっ子”と呼ばれているので、その名前を起用しました。

修善寺温泉の名所を集めたバッグは試作を作っている途中。
「他にも目の前の道を土日は歩行者天国にして、皆さんが安心して町を行き来できるようにしたい」と目をキラキラにして話します。あれもこれもと尽きることない楽しそうなアイデアが燃料となり、瞳の輝きがさらに増してきます。
もし困難なことが起きても、だるまっ子の彼女なら大丈夫だと思えてしまう美葉子さん。持ち前の軽やかさを武器に、これからも七転び八起きで乗り越えていく姿に応援です。

修善寺 燕舎の基本情報
住所︓静岡県伊⾖市修善寺825-2
営業時間︓10:30〜17:00(たまに21:00)
定休⽇︓⽉曜・⽊曜
アクセス︓温泉場バス停より徒歩約3分、修禅寺より徒歩約3分
http://tsubame-sha.net/
【PEOPLE】キャンドルで頑張れとエールを送る、まゆみちゃん
いつか、いつか訪ねたいと思ってた人がいて、実現が5年越しになってしまった。
それはキャンドル作家のまゆみちゃんです。

順風満帆だったスタート
キャンドルと彼女の出会いは突然で、アメリカに留学していた頃。
たまたまキャンドルをプレゼントしてもらい、その可愛さに一目ぼれ。もともと携帯ケースをデザインするなど何かを作ることが好きだったまゆみちゃん。その流れでキャンドルも習い始めます。

日本帰国後もキャンドルへの熱は冷めず、2013年にキャンドル講師として教室も開催。
世の中がハンドメイドのブームだったこともあり、教室には大阪や兵庫など遠方からの人たちも訪れ、多忙な日々を送っていました。

「あの頃は成功したい!って気持ちがとても強くて、成功って何?と自分の中で考えてみたら、まずは売り上げを上げることだった」と昔を思い返す、まゆみちゃん。
自分にしかないものを作りたい職人気質に加え、多くの人に見てもらえるようマーケティングを独学で勉強する根性の持ち主。自分ひとりでこなすのは容易ではなかったはず。
太刀打ちできない時世の流れ

しかし、努力が報われ始めた頃、自分の力では太刀打ちできない事態に直面します。
ブームが去ることで、どんなにWeb対策をしても、思ったように閲覧数や売り上げが伸びない日々が続きます。
「その時の自分はどこか張り詰めた表情をしていて苦しかった」
そう、自分の感情をごまかさず、素直に言える彼女は強いと思う。
そして、それができるのは自分に徹底的に向き合ったから。

大切なものは何か?
自分は何を目指すのか?
それは本当に自分がやってみたいことか?
環境を変え、自分自身だけでなく、人間関係も見直した。
それでも、彼女の元から去らなかったのが…
「やっぱりキャンドルが好きだという気持ち」

純粋な想いほど強いものはない。そして、そこに余分な説明もいらない。
自分の価値観で進んでいく

それからは、ただ素直に自然に作りたいものをキャンドルで表現していきます。
やるか、やらないかという問いに直面しても、まゆみちゃんの場合は既に“どう”やるかという次の段階に意識が進んでます。
それは自由であり、もしかしたら孤独な世界かもしれない。
でも、人には見えていない道もまゆみちゃんには見えて、一人で歩むことに躊躇しない強さがある。そして、背中を押してくれる素敵なものが彼女の周りには存在し、それを見つける目も彼女は持っている。

キャンドルのアイデアはどう浮かぶの?という問いに、
「完成図が頭の中にあって、それを後は実践でかたちに仕上げていく感じ。後はもう指に委ねてみたりとか」
と答える、まゆみちゃん。作りたいもの、やってみたいことが溢れ出ている様子です。

「見た目や肩書、年齢でものごとを諦めてしまう人がいるけれど、それって本当にもったいない事だと思うの。何事もやってみないと分からないし、やってみたからこそ得るものってあるから」
それは自身のキャンドル作家としての活動にも当てはまると言う。
彼女が資格や団体にも所属せず、キャンドルを作り続けるのは自分を見てもらうことで誰でもキャンドル作家になれますよとエールを送っているのだ。
“まずはできることから始めてみませんか?”と彼女と同じく純粋にキャンドルが好きな人たちに向けて呼びかけている。作品を通して、彼女は自分の姿勢も表現しようとしている。

歩みは止まらない、これからも

これからはキャンドル作りの動画作成に力を注ぎたいと、まゆみちゃんの言葉は熱い。
既に何本かの動画をYoutubeにアップし、活動も開始。笑いながら大変だとこぼすけれど、知らないことをどんどん知っていくのが面白く、いずれ同じ夢を持つ人が現れた時にアドバイスできるようになりたいのだと。

実年齢より10歳も若く見られることがあると聞き、それはまゆみちゃんが純粋にやってみたいこと、好きなものを追い続けてきたからなんじゃないかと思えば納得してしまう。
彼女のブランド名「Tiny Jewelry Candle(タイニージュエリーキャンドル)」のように、まゆみちゃんの瞳は宝石のごとく輝き、キャンドルのように情熱の炎が燃えています。

【PEOPLE】子供達にバスケを教える、元プロ選手のアキ
真っ暗なたんぼ道が心細かった。
Googleマップと位置を照らしながら、そろそろ目的地が見えてくるはずと道の先に視線を移すと、
まるで灯台のようにオレンジ色の光が“ここだよ”と教えてくれ、一心不乱に目指す。

近づくにつれ聞こえるキュッキュと床の擦れる音、そしてホイッスル。
今日の主役、頑張る人は体育館で会えます。
バスケコーチの翁長明弘さん

翁長明弘(おなが あきひろ)さん。通称アキ。
実は私と彼のご縁は意外と長い。
アメリカの大学で私はジャーナリズム、アキはバスケットボールを学んでいる最中に出会った。
沖縄出身の彼は小学5年生でバスケと出会い、そのスポーツは彼に日本を離れさせる決心までさせた。
“もっと上手くなりたい、プロになりたい” という純粋な想いを携えて。

カリフォルニアのカレッジバスケで学び、卒業後は日本に帰国。
その後、描いた通りに日本バスケ界でプロ選手として活動してしまうのだから、
彼の身体能力の高さ、実行力には舌を巻いてしまう。まさか友達からプロスポーツ選手が出てくるなんて。
しかし、渡米前に手術を繰り返していたアキの身体はプロになった時点で、既に時限爆弾な状態に。
つくばロボッツ、福島ファイヤーボンズ、アースフレンズ東京Zと全国を巡り、2016年に引退。
引退と共に新章がスタート

2018年より、バスケットボールのコーチとして活動。小学校と中学校を中心にバスケスクールを開催し、
クラブチームも男女ともに立ち上げてしまう。

「自分でやりたい事がやれない環境なら意味がないし、だったら自分で始めてしまおうと思って」
淡々と語るけれど、当初は知名度もなく、参加する子供たちも少数。
指導はもちろん、営業、会場手配など全てを一人で行っていた。
頑張れる源とは?

やることの多さに打ちのめされ、思わず「なぜそこまで頑張れるの?」と聞いてしまう。
「自分が教わったこと、学んだことを伝えたいから。
アメリカ時代のコーチや、プロ選手だった時のコーチ。それにファンとか色々な人たちにお世話になってて…
だから今度は自分が出来る事をやっていきたい。それに子供たちが試合に勝ったり、
練習で新しいことが出来たりすると喜んでくれるから、もっと喜ばせたくなる」と言葉にも熱が入る。
コーチとして大切にしてること

徐々に口コミで評判が広まり、縁あって高校で女子バスケチームをコーチする機会に。
皆が勝ちを諦めた試合でも、アキは最後まで選手たちを信じると言う。
多感な時期に、自分じゃない誰かが自分以上に自分の事を信じてくれる。こんな幸運なことはないと思う。
それにひとつひとつに自分の考えを持つこともアキは子供たちに大切なことだと伝えようとしている。
試合でのハーフタイム(休憩時間)、どんなに白熱した試合でも最初の5分間は選手同士で話し合うようにさせている。
どんなパスが欲しいのか、どんなプレイなら勝てるのか。
実際に戦ってる本人たちが考え、チーム一丸となって勝利を掴もうとする。
子供たちがアキから学んだことはバスケだけに関わらず、きっと今後も彼らの役に立つもののはず。

「自分は能力的にそんなに良いプレーヤーじゃなかったから、
どうしたら試合で勝てるのかを必死に考えていた」と選手としては辛い事実も把握している。
だから、どんな練習をすれば上手くなるのか、練習一つひとつも実戦に活かせられるよう余念がない。

「この位置からだとシュートは入りにくいから、その前にシュートかパスを選んだ方がいい」
「練習で普通にパスをするんじゃなくて、フェイクも入れるようにして」と頻繁に声が飛ぶ。
失敗したり、うまくいかなかったりしても根性や能力で個人を責めず、
成功する理屈を教えるスタイルはアメリカで学んだもの。
スクールでは自らデモンストレーションを行い、子供たちも真剣にアキの一挙一動を見つめる。

これからを支えるアキの夢
生徒数も着々と増え、基盤も出来上がりつつある今、アキの夢は体育館を建てること。
その根源には、誰もがもっとバスケットボールを楽しめるようにしたい想いがある。
アキの快進撃はまだまだ止まらなさそうで、こちらもワクワクしてくる。

バスケを愛し、バスケで人の縁を繋いでいくアキ。きっとバスケの女神様も彼のファンのはず。
冒頭で登場した、真っ暗な闇の中で進むべき道を教えてくれた体育館のように、
これからもアキが灯台となって子供たちの道を照らすのでしょう。

【PEOPLE】世界の手仕事を仕入れる、ひろみさん
西荻窪駅から徒歩約3分。
オーナーのひろみさんが手がける旅する雑貨屋「Hin plus(ヒン プリュス)」があります。

”せっかく世界各国を旅してるんだから、その国のものを持ち帰って日本で販売できないかなぁ”という気持ちが私の中に芽生え、世界の雑貨を取り扱っているお店をリサーチし始めた時に見つけたお店です。

最初に訪れたのが1年前で、その時はお店の商品やひろみさんの情熱に見事ノックアウト(笑)
だって、一つひとつの商品知識といいますか、愛情がすごい。
コンパクトな店内にはヨーロッパ代表のバルト三国、ポーランドに始まり、アジア代表のモンゴル、南米代表のメキシコ、ボリビアで買い付けてきた商品が並び、お店自体が小さな世界です。
そして、ひろみさん一番のこだわりが「ハンドメイド、手仕事であること」

ラトビアのミトン、エストニアのスカート、モンゴルの刺繍ポーチなどなど、どれも手仕事で作られたものがお店に並び、各国ばらばらなんだけど、ハンドメイドという大まかな括りが核にちゃんとあるから、手芸や民族文化が好きな人にはたまりません。

「英語が流暢ではない」とひろみさんは言うけれど、好きなものに対する情熱がその分強く、その気持ちが周りを動かします。観光地としてオープンしていない工房も”見たい!知りたい!”というストレートな気持ちを伝えることで、ひろみさんは入れてしまうのですから。
これは英語云々の次元ではなくて、本当にすごい才能です。

だから、ひろみさんが仕入れてくる商品には、しっかりとストーリーが根付いてる。
手仕事で丁寧に作られているから既に唯一無二の魅力があるのに、そこにひろみさんが逸話や歴史、背景を加えてくれるから更に存在が高まり、厚みが増すのを感じられます。
ひろみさんに買い付けられた商品は幸せだなぁと呟いてしまうほど。

頑張れる原動力は”好奇心”。ここまで好きなものが明白なことに羨ましさと尊敬を抱きつつ、
11月下旬からモロッコに行かれるので、また遊びに行かなくちゃです。
<Hin plusの基本情報>
住所:東京都杉並区西荻北3-3-12
電話番号:070-4084-0518
営業時間:12:00~19:00
定休日:不定休(Facebook、Instagram、twitterに記載)
アクセス:JR西荻窪駅から徒歩約3分
https://hinplus.com/





