飛行機が着陸してからも日本入国への道のりは長いです。(前編はこちら)
現地で取得した陰性証明書の確認に始まり、抗原検査、アプリのインストールに誓約書の確認などなど。すべてをこなすのに要した時間は約2時間(新幹線なら東京から京都へ行けちゃいます)。長距離フライト後には結構ぐったりです。
到着早々に機内待機
11時間におよぶフライトを経て、無事に成田空港に到着。シートベルトのランプが消えると同時に荷物を棚から出し、最寄りの出口に向かうのがいつものパターンですが、
「指示があるまで、お座席でお待ちください」
と、いきなり出鼻をくじかれました。何でも、国際線を乗り継ぐお客様がいるので、その方をまずご案内してからとのこと。しかし、ここでスタッフさんも大慌て。何でも機内と現地で聞いていた人数が違うのだとか。それは確かに気持ち悪い状態で、自分もそわそわ。
ちなみに乗り継ぎができるのは国際線のみで、国内線はNG。帰国後14日間は、公共交通機関の利用が禁止されているので成田空港から出る場合は、ハイヤーを予約する、もしくはレンタカーで目的地まで向かう方法など限定されています。
全員集合してからのご案内
待つこと約10分、退出の案内がされたので機内から空港の館内へ。いつもなら入国審査に進むのですが、ここでも廊下に出るやいなやストップ。スタッフさんが待機しており、乗客全員集まってから誘導するとのこと。さすが集団行動の国。徹底しています。
そして、案内される道すがら、随所で大量に設置された椅子を目撃。初めての光景に驚きますが、きっと待合席なんだろうなと予測しつつ、意外と速く歩くスタッフさんに置いていかれないよう歩きます。
そして、ちょっとした受付っぽいエリアに到着し、まずは書類の確認。PCRの陰性証明書、パスポート、ワクチン接種の証明書(コピーをとられるので事前に準備しとくと時短に)、そして機内で配られた誓約書と健康カードなど、気が付けば自分の手元には何枚もの書類が重なっていました。
機内で配られる誓約書
さて、誓いを約束すると書く「誓約書」。その言葉だけでも十分に重みが感じられます。書かれているのは、14日間の待機を守ることや、アプリから尋ねられる位置情報や健康状態に応えることなどなど。
ふと疑問に思ったのが、「解熱剤・かぜ薬・痛み止めなどを使用している」の質問。例えば風邪の症状がなくとも、ヨーロッパの乾燥した気候で生活していると喉が痛くなることもあるし、気圧の変化で頭痛が生じる人もいるはず。私にいたっては女性の日になると、あまりの腹痛で痛み止めは欠かせないもの。
質問の意図は健康チェックなのは重々承知で、私が挙げた例で薬を飲む場合は致し方ないと思われそうだけど、それでも、ただでさえ緊張状態に陥っているのだから、ここで自分が不利になる回答は避けたいところ。そうなると痛みは耐えるしかないというある種の我慢を強要されている環境に、より居心地の悪さを覚えるのです。
唾液検査で再びドキドキ
無事に書類のチェックが終わったら、あとは単独行動で矢印に沿いながら、抗原検査をしたり、アプリのチェックをしたりと、1つ1つをこなしていきます。今回の経験で面白かったことといえば、普段入れない空港随所の建物を巡れたことです。
抗原検査からスタートしますが、これは唾液を提出するタイプで、ブースで一人悶々と格闘しました。このタイプは以前も利用したことあるのですが、それより大きく、思いのほか時間がかかりました。大体、スタッフさんに量を確認するのですが、皆さん1回目は量が少ないとやり直しを指摘されていた模様。
自分のサンプル番号をパスポート裏に貼られます。72時間以内にPCR検査で陰性を受けているのだから大丈夫と自分に言い聞かせつつも、これで陽性だったら辛いなぁとハラハラな気持ち。
確認・確認・確認
抗原検査を受けた後は、ひたすら書類とスマホの確認作業です。帰国後14日間はアプリを通して、健康状態を毎日報告する必要があるほか、突然アプリから現在地を聞かれたり、ビデオ電話がかかってきて自分を含めた背景を30秒間映すことを指示されたり。案の定、このアプリは帰国者の批判を一身に浴びています。
連絡先を確認するため、登録したメールアドレスに間違いないかテストメールで確認を求められたり、居場所も常に把握されるためGoogleマップの履歴記録がオンになっているかをチェックされたりと、自分が知らなかった機能も新発見したと同時に、スタッフさんの手慣れた指裁きに見入ってしまいます。
数々の人を介し、最後に辿り着いたのが大きめの待合室。ここで抗原検査の結果を待ち、陰性であれば念願の入国審査へ。意外とここでの待機場所が長く、人によっては予約したハイヤーに電話をしたり、お手洗いで席を離れたりする人も。
ドキドキしながら聞きに行くと、陰性という結果。一安心です。気持ちはさながらプレバトの結果を聞く芸能人か、試験結果を見に行く受験生。陰性だと赤い紙を渡され、いつもなら最初に訪れる入国審査にやっと辿り着きます。
到着2時間後に解放
入国審査後、荷物を引き取り、到着ロビーに辿り着いたのは16時。飛行機が到着してから約2時間後のことです。
東京に自宅がある私は、このまま自宅に直行できますが、ここから地方へ向かう人たちはさらに移動が待ち構えているかと思うと、まだまだ安堵できないはず。多くの人がレンタカーで向かうと聞き、疲れた身での運転を憂い、せめて代案があれば良いのにとこぼしたくなります。
日本に潜む外への意識
日本国内にいたら、きっと分からなかった日本の海外に対するコロナ対策。ドイツ入国がすんなりだったので、余計に居心地の悪さが際立ちました。旅行目的の入国を受け付けていないから乗客のほとんどが日本人だったものの、それでも機内には約10名の外国籍の方がいたので、今回の対応で果たして彼らは日本にどんな印象を持ったのか、お節介ながらに懸念です。
陸続きのヨーロッパと島国の日本を比べるのはお門違いかもしれませんが、それでもヨーロッパでは国同士の移動が当たり前となり、人やモノが流れ、そこに活気が感じられます。今回、日帰りでフランスを訪れましたが、ICEに乗車中も切符の確認だけで済みました(パスポートもワクチン接種のチェックもなし)。
ネットで代用できるとはいえ、人との信頼関係は五感で共有しないと築けないとコミュニケーション学で聞いたことがあり、それはビジネスの場面でも当てはまるはず。ヨーロッパではコロナに対する意識は下がり始めましたが、果たして日本はいつまで続けるのか。今回の経験で垣間見えたのが、日本の国外に対する遮断性。さすが同じ日本人でありながら帰国子女という言葉が存在するだけあって、海外への強い意識は今もなお健在なよう。今だに続くwithコロナという名のagainstコロナの振る舞いは、世界での日本の立ち位置にもつながっていきます。