【旅記事】メルボルンx住みやすい街: 無敵のオールラウンダー

「住めば都」という言葉がある通り、一旦その町に住んでしまったら短所が愛嬌に見えて、長所はさらに惚れ湖んでしまうはず。

では、世界中の街はどうなんだろう?ハワイは訪れて楽しい場所だけど住んでみたらどうなのか、パリはお洒落なお店が多くて素敵だけど住んでみたらどうなのか。夢と想像力が膨らみます。

世界一住みやすい街とは?

世界各国の政治、経済を調査し「エコノミスト」も刊行しているイギリスのEIU社では、「世界で最も住みやすい街ランキング」を毎年実施。2019年はオーストリア・ウィーンが2連覇を果たします。

しかし、歴史を遡ると実はオーストラリア・メルボルンが2010年から2017年まで7年連続で首位に輝いていたのだから驚きです。しかも、2019年はわずか0.7ポイントで2位という悔しい結果に。

そこまで高評価のメルボルンの魅力は何なのか?

2017年にメルボルンに訪れましたが、ここは歴史x現代、都会x自然という相反する性質のもの全てが身近に存在していたのが印象的でした。

そして、万人が平等に享受できるサービスが整備されていたことも魅力。住み心地とは改めてバランスなんだと再認識させられた場所です。

ちなみに日本だと東京が8位にランクイン。ランキングは①教育 ②医療 ③持続性 ④文化と環境 ⑤インフラの5項目が評価され、①教育②医療③持続性の3項目が満点!唯一Top10に入ったアジアの街なので、励みになります。

歴史x現代 が共存

オーストラリアの南東部に位置するメルボルン。同国首都のシドニーに次いで人口が多いですが、シドニーが忙しい近代的な街と形容されている中、メルボルンは落ち着いて趣きが残る街という存在。

ポート・フィリップ湾に面した港湾都市で、ゴールドラッシュが始まった19世紀中盤は街が飛躍的に沸いた時期。実はシドニーを抜くほど街が巨大化し、統治していた大英帝国の首都ロンドンに迫る勢いだったのです。

中心地には教会はじめヴィクトリア女王時代の建築物が多く残されていて、まるでヨーロッパのよう。そのため、オーストラリアの中でもここはイギリス統治時代の歴史と文化が今も息づいています。

メルボルンで目を引いたのが洗練されたアーケード。豪華な装飾が施され、煌びやかな空間がどこまでも続く様子に息がこぼれ、いかに街が潤っていたのかが窺えます。

たまたま歩いていたらブロックアーケード(The Block Arcade)を見つけて、そのまま入ってみると「ホープトン・ティールームズ(Hopetoun Tea Rooms)」というお洒落なカフェを見つけました。

ショーケースに並ぶケーキが輝いていて、ちょうど朝食場所を探していたので、ケーキを惜しみつつ普通の食事を。紅茶の種類が豊富で、何よりも雰囲気が素敵でした。ここはまた訪れたいです。

しかし、古い建物ばかりじゃないのがメルボルンの面白さ。確かに中心地は旧市街の面影を今も色濃く残してますが、中央駅や海際に近づくと東京と遜色ない高層ビル群が登場。

20世紀に突入しようと、まだまだメルボルンの勢いは止まらなそうです。

都会x自然 がすぐ近くに

ニューヨークにセントラルパークがあるように、東京に伊豆があるように、都会に近いほど自然の価値は上がります。それはメルボルンも同じ。メルボルンでは旧市街の観光ツアーのほか、景観が美しい郊外ツアーも人気です。

全長約250kmに及ぶ海岸線を走る道“グレート・オーシャン・ロード”。奇岩が連なったり、豊かな自然に癒されたりと人気のドライブコースです。

実は第一次世界大戦後に訪れた大恐慌の中、帰還兵に何か仕事をということで計画された道路。16年の歳月をかけて完成しました。支援のために生み出された道路は今日も人々を癒し、素敵な思い出を紡いでます。

ブライトンビーチに建つビーチハウスの列。現地ではビーチボックスと呼ばれ、その数はなんど80以上!19世紀頃より更衣室や物置として地元の人たちが所有してました。

これだけ同じ建物が並ぶと持ち主も分からなくなるということで、アーティストさん達とコラボして、それぞれ独特のデザインに。今では町の観光名所にもなって一石二鳥です。

オーストラリアと聞けばカンガルーやコアラを浮かべる人も多いはず。メルボルンの近くにもコアラが飼育されている場所があります。

触れるのか?と思いきや、メルボルンがあるヴィクトリア州は法律で禁止されてます。コアラに触れられる州はアデレードがある南オーストラリア州、パースの西オーストラリア州、そしてブリスベンのクイーンズランド州の3州のみ。旅の目的がコアラとの触れ合いなら、事前に要確認です。

野生のカンガルーやワラビーも生息してて、ふとした瞬間に出会えることも。

他に毎日決まった時間に野生のペンギンが海から歩いて巣に戻る様子を見れるフィリップ諸島もメルボルンならではの観光名所。車で1~2時間走ればすぐにオーストラリアの大自然に触れられます。

嬉しいインフラサービス

都会の刺激と街に深みが生まれる歴史を併せ持つ街、メルボルン。近代的な生活ができて、リラックスしたいなら自然も身近。欲しいものが揃っているのがメルボルンの魅力ですが、それに加えて住みやすいと思えたのが、インフラの充実ぶり。

市内は路面電車が走り、しかも中心地の使用頻度が高いエリアは無料で乗車できるという太っ腹ぶり。ホテルや商業施設のシャトルバスが無料というのは日本でも聞きますが、日常の公共交通機関が無料なのだから驚きです。人は動くし、車は減るし。良い循環が確かに生まれます。

そして、メルボルンの美術館が無料だったのも驚きです。NGVことヴィクトリア国立美術館ではオーストラリア芸術品が並び、原色で描かれたアボリジニーの作品からは力強さが感じられます。

アートを身近に感じると感性が刺激され、ものや世界を見る目が変わってきます。だからこそ、誰もが気軽に芸術に触れられるというのは豊かな社会を築く一歩になるのではないでしょうか。


公園が多いことから、メルボルンは別名“ガーデンシティ”として市民に親しまれています。オーストラリア第2の都市で大都会にも関わらず、愛称には自然を指すものを。発展や開発だけを追い求めるのではなく、対局にあるものも取り入れてバランスを保つ。一極に偏らないことが住み心地の良さなんだとこの街は教えてくれます。