ドイツx世界最大のツーリズム展示会:ITB Berlinを視察!旅行のトレンド、ヨーロッパ発の旅行は日本と何が違う?

旅行にまつわる情報から最新技術、そして世界中の観光局が自国をアピールするために集った「ITB Berlin」が2025年3月4日~6日に開催されました。ツーリズムに関する展示会としては世界最大級。ドイツのベルリンで開催されたとあって参加者の大半がヨーロッパ出身。日本の旅博やツーリズムEXPOとは一味違い、ヨーロッパ目線の旅行を肌で感じてきました。

ブース規模で知る、ヨーロッパとの関係

ITB Berlinに参加する国の数は180カ国以上と、これはほぼすべての国がこの展示会場に集結していることを意味します。ヨーロッパはもちろん、アフリカ、アメリカ、アジアとエリアごとに会場は割り振られ、日本での旅行博と異なるのがアフリカと中南米の規模です。

ケニア、南アフリカ、タンザニア…。ブース自体も大きいですが、旅行会社やホテルなど、ありとあらゆる関係者がデスクで商談中。日本からだとアフリカは遠い国ですが、ヨーロッパにとってアフリカは日本にとっての東南アジアかオーストラリアか。

日本の展示会で見たブースとは全然異なる手の込みようにアフリカの本気が感じられます。

モロッコでは有名なミントティーが振る舞われ、奥ではライブ音楽も。同じアフリカ大陸でも南と北でまったく異なる雰囲気です。

日本にとって最遠の南米もヨーロッパなら大西洋を渡ればすぐ。ペルーのブースでは名物セビーチェの作り方を実演。魚介をつかったマリネですが、実は生の魚を使うようになったのは日本の影響だと紹介し、その事実に驚きです。生の魚を食べることに関して、日本はファーストペンギンだったんですね。

ペルーでは先住民の方による生歌も披露してくれました。

ヨーロッパエリアは参加国も多いので何カ所かに分かれていますが、その振り分け方も興味深かったです。バルト三国、北欧が集まる会場にオランダ、イギリスも。ほかのフランスやスペイン、イタリアなどヨーロッパの多数とはかなり離れた場所に割り振られていたので、なぜ距離を置くのかな?と疑問を感じてしまいます。ヨーロッパの中でも事情が色々とありそうです。

ちなみにヨーロッパで一番長蛇の列だったのが、イタリア北部にあるベネト州のブース。アンケートに答えると手作りのジェラートを振る舞ってくれます!

まろやかなバニラ味と酸味のあるベリージャムの組み合わせは格別で、ジャムの量を調節しながら味の変化を楽しめました。

ブルガリアでは人気のワインと一緒にサインやチーズのオードブルも。盛り付け方がおしゃれです。

ひまわりが有名なスペインのアンダルシア地方は奇抜なブルーのネオンライトによる演出で、真夜中のクラブさながらの雰囲気。太陽の国とは異なる印象です。

アジアブースの花形はタイ

ヨーロッパにとって遠いのが、私たちのいるアジアです。それでもドイツ人にとって人気旅行先のスリランカはブースが大きく、多くの人が訪れてました。以前、スリランカに行った際、宿泊客の8割がドイツ人だったことに驚きましたが、アーユルヴェーダなどウェルネスが好きなドイツ人にとってはまさに理想の休暇を過ごせる場所です。

そしてスリランカ以上に勢いを感じたのがタイでした。ブースはアジア全体の1/3を占めているのではないか?と思えるほど。さすが観光先進国です。

一角にはムエタイのリングも。時間帯によってはムエタイのショーも実演していて、どうしたら観客が集まるかも抜け目がないです。

日本もブースを出していますが、タイはもちろん、韓国より小さめ。ヨーロッパからの集客って難しいんだなっと実感したスペースでした。

それでも時間帯によっては訪れる人の名前を漢字で書いてプレゼントするパフォーマンスが行われ、もらった人たちは大喜び。その笑顔にこちらもほっこりです。

展示会ではフードトラックが登場し、世界中の食事を提供しています。ベルリン名物のカーリーブルストといったソーセージや、手軽なホットドッグ、メキシコ料理のブリートーがありますが、大盛況だったのがベトナム料理。近くを歩くと香辛料が漂い、急にワープしてアジアの一角に来たみたい。匂いの力、すごいです。

「ウェルネス」「LGBT」が急浮上

ブースを出展しているのは国だけとは限りません。ヨーロッパではウェルネス(健康)をテーマにした旅行が最近の流行りのようで、国をまたいだ温泉同好会の姿も。意外とヨーロッパには温泉地も多く、宿泊と温泉、そしてマッサージも付いたパッケージプランを販売しているのだとか。これならヨーロッパの旅行者を日本の温泉地に呼び込むこともできそう。ただヨーロッパの方はお湯がぬるめなので、そこだけ注意です。

あとLGBTのブースもあり、予想以上に規模が大きく、日本からも京都のホテルが出展していました。最近、日本でもLGBTの方々からガイドのご依頼が入るなど身近な存在に感じています。特別なケアや知識は無知なので、機会があれば知っておきたいものです。

旅行もAIが大活躍

期間中は3つのステージが設けられ、スピーチやディスカッションも行われます。人気だったのがBooking.comの〇さん。AIがどう旅行業界に影響を与えるかがトピックで、AIは人類を進歩ではなく進化させると明言。実際にBooking.comでも検索サービスに組み込んでいます。例えばホテルを探す際に家族構成や好みの条件を伝えることで世界中からおすすめのホテルを提案するのも近々で実施予定らしい。国を絞る必要もなく、予想外な提案もしてくれるので、より選択肢も広がりそうです。

今回、初めてITBに参加しましたが、この期間中のみベルリンのホテル代金が2~3倍に値上がりし、それだけでもこの展示会の影響力が分かりました。新たな国の情報やヨーロッパでの旅行事情を知ることができたのも収穫。一人ひとりの好みで同じ目的地でも全く異なる内容になるのが旅行の醍醐味。これからも世界を開拓し、まだ見ぬ魅力を発掘していきたいものです。