ドイツx世界最大級の見本市:「アンビエンテ」で発掘!未来のヒット商品

クリスマスを終え、春が訪れるまでの静けさが漂う2月のフランクフルト。しかし、見本市(メッセ)会場は朝から晩まで熱気に包まれ、大賑わい。東京ドーム6個分に近い敷地内では約4,000社の企業が自慢の商品を披露し、世界中のバイヤーに向けて猛アピール。インテリア、キッチン用品、文房具、雑貨など、ありとあらゆる品々が並ぶ様子は圧巻で、巡っているとアイデア商品からお国柄が表れるもの、それに世の中の流行が見えてきます。

アンビエンテとは?

アンビエンテ(ambiente)は、ドイツのフランクフルトで開催される見本市(メッセ)の名前です。毎年1月末から2月初めにかけて行われます。

見本市にはテーマがそれぞれあります。例えば、ラスベガスのCESはIT/テクノロジー、東京のジャパンモビリティショーだと自動車。しかし、アンビエンテの場合はconsumer goods=消費財ということで、つまり消費できるものなら何でも!と、とにかくテーマが幅広いのが特徴です。その中でもインテリア、キッチン用品、文房具などのカテゴリに分けられ、複数の会場で開催されます。

出店する企業は4,000社にもおよび、5日間にわたって開催されますが、来場者は10万人近くも。世界進出を目指す企業が出展し、掘り出し物を探しに世界各国のバイヤーが訪れるという、まさに世界の名品と目利きが集結した舞台なのです。

まず個人的ヒット商品をご紹介

生活に彩りを添えてくれるアイテムばかりなので、専門知識がなくとも楽しめるのがアンビエンテの魅力。こちらのガラス製品はドングリとアーモンド専用の花瓶。種がフィットするよう開口部がデザインされ、密閉しているため下部の水は空気にふれないから1年間は水を代えなくて良いというのだから驚きです。既に日本の卸売業者とは契約済みなので、ご自宅で使っている方もいるかも?

ひっくり返ったパラソルがランプになっているというアイデア、デザインどちらもかわいいインテリア。傘を持っているお姉さんのファッションも素敵で、子ども部屋や大学の寮、雑貨屋さんにも似合いそう。

カラフルなフェルトが舞うモビールも癒されます。ニュージーランド産の羊毛をネパールで作り上げていますが、企業はデンマーク出身というグローバルな環境。天井空間を活用したグッズは場所も取らずに部屋の雰囲気を和やかにしてくれるので、結構好きです。

エコと茶器が会場を席巻

SDGsやら環境問題はもはや流行ではなく、商品を生み出すにあたって前提として取り上げる話題になっています。こちらのキッチン用品は材料のアルミをリサイクルして誕生したもの。環境面はもちろん、デザインでも目を引く商品がどんどん登場していると実感です。

食器エリアを見ていると、茶道に使用されるお茶碗や日本の伝統工芸品の鉄瓶をよく見かけました。ティーカップ、ケトルが主流ですが、暮らしに良いものを求めているのも世界的な傾向なのかも。見本市だけでなく、町を歩いていると茶器を扱っている専門店を見る機会も多く、茶葉専門店では茶道一式を購入している人も見かけたので、抹茶は意外と広く認識されていそう。キットカットなど抹茶のお菓子も一役買っていそうですね。

グッズで感じる、お国柄

世界各国の企業が出展しているということで、日本ならお箸やお茶碗といったその国の日用品も多く登場。とは言っても、ドイツの強靭なビアカップは日本にとっては滅多にお目にかかれない珍しいもの。物を通して、その国の風習や文化が見えてくるのも面白いです。

こちらもドイツの企業。大小さまざまなブラシは細かく用途に分けられ、毛の硬さも異なります。まさに職人を重宝し、掃除好きのドイツならでは。

ピザを焼く際に使うピザピール。日本で見かけませんが、イタリアではこんなに種類があります。

遊び心が感じられる食器もイタリアらしく、色使いも素敵です。

スイスの名物料理、チーズフォンデュの一式セット。日本のお鍋みたく、皆で囲む家庭料理ということが新鮮です。

日本以外のアジア勢もブースを出展しています。特に規模が多かったのがベトナムなど東南アジアによるカゴグッズ。会場もアジアとアフリカの企業が集中していたので、ヨーロッパではなくアジアの青空市場にいるような雰囲気が出てました。

石製品はヨーロッパ、木製品はアジアというイメージを再認識。

レトロ柄がキュートなセラミック食器。中国もしくは韓国の企業で、色使いだけでアジアっぽさが伝わるから不思議です。

展示方法もユニーク

ブース自体のデザインも、歩いていると企業ごとに個性が出ていて楽しめます。ファッション関連だと、店舗で見るディスプレイと遜色なく、手に取ることが物の価値を知る一番の方法だと訴えているよう。

歩いている際、度肝を抜かれたデザインがこちら。一見すると、普通のダイニングテーブルですが、実は壁に張り付いています。90°回転している光景は、まるでだまし絵みたい。この発想と実現できた技術にあっぱれです。

ブースなの?バーなの?と困惑したくなるほどスペースを広々と使っているのも日本の見本市ではあまり見ない光景。商談はカウンターバーでワイン片手に行うのでしょうか。混雑な雰囲気を微塵も感じさせない、優雅な空間です。

みんな大好き、文房具

文房具が人気なのも世界共通のよう。ブースでは新しい絵の具や道具を使って、アーティストによるライブパフォーマンスが行われます。最新鋭のものが並ぶ一方、ラッピングや装飾品として使われる紙の美しさは今も昔も変わらずで思わずため息がでます。

ノートやメモなどヨーロッパらしい柄の文房具が並ぶ片隅にあったのが、その名も「オリガミ(ORIGAMI)」。山折り、谷折りを組み合わせて、理想の形に導くオリガミはNASAも活用しているほどで、この言葉が万国共通になる日も近そう。

ヨーロッパだと学校への入学時期が秋ということで、それに合わせての商品も勢ぞろい。

キッチン用品は美の宝庫

使いやすく、見た目も美しいカトラリーは技術と美しさの結晶。ナイフの刃の長さ、スプーンの大きさ、柄の手ざわりなど、見た目は似ていても細部のこだわりが違いを生み、ここまで種類が多いのかと驚かされます。

クッキーの型も多種多様で見ていて面白いです。大きいサイズのものとか、焼き上がりを想像するだけでロマンが感じられます。

調味料、香辛料もさまざま。オリーブオイルにハーブを混ぜたり、チリで辛くしたり。ディスプレイも美しいブースでした。

今年のクリスマスが既にスタート

アンビエンテと同時期にその年のクリスマスに向けた見本市、その名も「クリスマスワールド」が開催されます。クリスマスが終わった直後ですが、意識は既に今年の年末へ。いかにヨーロッパではクリスマスが1年を締めくくる大イベントなのかが分かります。

電飾はもちろん、ツリーに飾るオーナメントなど、クリスマスを盛り上げるグッズがずらり。千年以上も続く伝統行事でも、その年その年でトレンドがあるなど、日々進化していることに驚きです。

締めくくりはライブパフォーマンスで華々しく

規模と影響が桁違いのアンビエンテ。主催者は一年前からメールで特徴を伝えたり、開催後の総括を報告したりと、常に忘れられないようにしている工夫が印象的です。最終日になると各ブースでは荷物を減らそうと展示品を販売し、バンドメンバーが生演奏を披露しに各会場をねり歩くといった小粋な演出も。まるで世界が集結したようなお祭り騒ぎな5日間。ここで見初められた商品があなたの手元に届く日も近いかもしれません。

2024年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。