長野市内から車で約30分という好アクセスの「飯綱高原スキー場」。1998年の冬季に開催された長野オリンピックでは会場のひとつを担い、
里谷多英選手が日本人女性として初の金メダル獲得という大挙を成し遂げたスキー場でもあります。
しかし、長年の暖冬続きで苦悩の末に運営を諦めることを決断。長野市民にとって誰もが思い出のあるスキー場は、2020年に約50年の歴史を閉じます。
■オリンピック選手が舞ったモーグルコース■
飯綱高原スキー場の目玉といえるのが、長野五輪の舞台となった“里谷多恵コース”。
コースの開始地点に立ってみると、かつて山全体いえ日本中で沸き上がった観客の声援や熱気が浮かび上がってきそうです。最大斜度は31度。
ここを最速で滑り降りるなんて、それだけでオリンピック選手の力量を見せつけられます。
コースを見定めるために視線はもちろん下方になりがちですが、
真正面では悠然と連なった山脈がまるで両手を広げて受け止めてくれるかのように穏やかな様子。
この景色がきっと多くの人たちを元気づけさせたり、つかの間の安らぎを与えてくれたりしたのでしょう。
麓から見上げる“里谷多恵コース”は堂々とした雰囲気。
数々のドラマを生んだコースからは唯一無二の存在感を今も感じられます。
麓には里谷多恵さんの功績を讃えている記念碑も。
■名物コースは滑り応え抜群の“Cコース”■
実は飯綱高原スキー場のおすすめコースは他にも。
3本ある中級コースのうち、Cコースは最大斜度が26度ながらも平均斜度が11度と一番斜面の起伏があるコース。
左右は白樺などの木々が並び、空や雲との距離も近く、より自然との一体感が感じられます。
スキー場内で一、二の長さを競うCコース。コース最後にはレストランが“お疲れ様”とお出迎え。そのまま休憩や食事をとった人たちも多かったはず。
■地形が楽しい“Gコース”はやみつき注意報■
スキー場最高地点から入るGコース。
景色はもちろん、コース自体も何度も滑りたくなる魅力の持ち主です。一番の理由が、その地形。
ちょっと挑戦的な斜度に加えてコース左右の傾きが異なるので、
“今度はこっち側を滑ろう”と毎度違うルートでコースを満遍なく滑り倒したくなります。
端にいくほど坂があるので、遊び方は自由自在。もう1回とおかわりをしたくなるコースです。
■目まぐるしく変化する景色に圧巻“Fコース”■
Gコース同様、スキー場の最高地点から始まるFコースも途中から里谷多恵コースに合流するので、中・上級者に人気のコース。
中級コースなのに最大斜度32度と容赦ない厳しさを見せる反面、訪れた人たちには息をこぼすほどの絶景でもてなしてくれます。
手前には三登山や愛宕山など低い山々が並び、善光寺平に広がる長野市内も望めます。
そして時期によっては街全体を覆い尽くすほどの大規模な雲海にも出会えます。
雲が眼下でまるで生き物のように山間を行き来したり停滞したりと、あまりにも桁違いな大気の営みに言葉を失います。
奥では群馬との県境を介する山脈が控えており、改めて山に囲まれている県だと認識してしまいます。
■憧れの貸切もできた!“Eコース”■
太陽が輝く日中ではなく月が姿を出す時間帯になると人気を博するのがEコースです。
スキー場で唯一のナイターコースで、斜度も初心者が安心して滑れるほどの広さでありつつ、中級者も滑りを楽しめる斜度なのが魅力。
しかも貸切も実施してるのだから驚きです。“自分専用のゲレンデ”が夢ではなく、現実となる場所は街のすぐ近くにありました。
夜には夜景がEコースを盛り上げますが、日中は飯綱山の山頂が綺麗に写真に収まります。
地元の人たちは子供の時に登山したり、ピクニックしたりと数ある山の中でも特に馴染みがある山です。
■開放感に気持ちも浮き立つ“Bコース”■
スキー場の中央を走るBコースは、まるで感動ドラマのような展開を味わえるコースです。
序盤はゆっくり、穏やかに。
真っ直ぐと見通しが良いコースが伸びていて、左右に立つ並木林が観客のように次の展開を暖かく見守ります。
林が終わったかと思うと突然パノラマの世界が目の前に飛び込んできて、思わず滑りを止めて全身でこの絶景を体感したくなるはず。
悠久という時の中も変わることなく存在し続けた自然の姿があります。
■数々の感動や思い出が生まれた場所■
長野ナンバーの車が多い「飯綱高原スキー場」。
家族や友達同士で気軽に遊びに来たこの場所はスキーやスノボを習う以前に雪遊び本来の楽しさを教えてくれました。
ゲレンデで流れてたアバ(ABBA)の “Top of the World”の曲を聞いていたら、
長野市の人たちにとって素朴でのどかなこのスキー場が世界で一番(トップ)なのかもしれません。