ひざを濡らすほどの水中を歩きながらアート作品を鑑賞する、水に入るミュージアムこと「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」。2018年にオープンし、期間限定だったものの好評を博し、2022年末までの延長が決定。さらに2021年4月7日より、炎を描いた2作品の登場に加え、4月末まで春を彩る特別な演出も。留まることを知らない、湧き水のようなチームラボの創作意欲にあふれた空間にいると、自分の世界ではない、別次元のどこかへ迷い込んでしまったようです。
水をテーマにした施設に炎が登場
森のごとくタワーマンションが太陽に向かって伸び、自然の恵みが市場に毎日届けられている豊洲エリア。開発と未来の匂いが漂う一角に、チームラボプラネッツ TOKYO DMMがあります。
建物正面には、新しい作品「空から噴き落ちる、地上に憑依する炎」が早速にもお出迎え。炎が燃焼する現象を捉えようと、気体の分子の動きまで観察を掘り下げ、その様子を線で表現。そして、その線を集合させて炎を描いたという作品は、完成まで3年におよぶ月日を要しました。
同じ映像を流すのではなく、常に異なる燃焼を繰り返し、決して火が消えることがない作品は異彩で妖艶。高さが15m近くあり、建物のランドマーク的存在です。
万華鏡のような光の世界
チームラボの世界に好奇心と畏怖を抱きつつ、まず案内されたのが1,000個はあるロッカー室。ここで靴や荷物を預け、身軽になるのが最初の体験。素足の開放感を味わいながら、いよいよアート体験の始まりです。
闇に照らされた通路の先で待っていたのは「The Infinite Crystal Universe」。点となった光が集合し、空間をどこまでも埋め尽くした光景は息を呑むほどの眩さと美しさに圧倒されます。
右、左と自分の周囲ばかり目を配りがちですが、鏡張りとなった足元や天井もお忘れなく。360度見回しても端が見えない、永続性の空間は絶えず色が変化し、その典雅な景色が訪れる人を迷い込ませます。
足元が反射するというとで、こちらではハーフパンツを無料で借りられ、更衣室も完備。女性用は身体にピタっとするデザインで、スカートと併用できるので当日のコーディネートも損なうことなく楽しめます。
ゆっくりと鑑賞できるエリアは2か所あり、そのうち1か所は綺麗なシルエットの写真が撮れると評判で、プロフィール写真に使う人も多いのだとか。
ジャンプしたり、ポーズを決めたり。座り込んだ写真も人気です。
クリスタルを彷彿させる白、サファイアのようなブルーと色が常時変化しますが、実はアプリから自分で色をリクエストするのも可能。ランダムに登場する6つの星から1つ選ぶことで、その星に見合った光と音が奏でられるという、参加型アート作品になっています。
鯉と戯れる、唯一無二の作品
裸足になった理由に納得するのが、次の作品「人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」にて。
ひざ下まで水に浸かる、プールのような空間には鮮やかな鯉が自由に泳ぎ回り、楽園のよう。その優美な姿を目で追っていると、鯉が興味を持って、こちらに近づいてくることも。対して、追いかけると逃げることもあるという、命を宿した生きものらしい一面も持っています。
色が薄い衣服を着ていると、鯉が自分のもとに遊びにくることも。
鯉の群れが自分の周りを自由奔放に泳ぎ回るだけでも一興ですが、触れると季節の草木に姿を化すというのだから目を見張ります。
夏はひまわり、秋は紅葉など数種類が選ばれますが、4月末までは特別に桜の花びらが一面に舞い散る仕様。
一定の時間が経過すると、鯉の泳いだ軌跡が光の線となり、鯉自身もピンクや赤の光へ。
自分を中心に光の渦が巻かれ、周辺と一体化することで、この作品はクライマックスを迎えるのです。
「作品のために建物をつくったというだけあって、この施設の特徴は規模が大きく、チームラボが取り組んでいる没入感や、アートと自分の境界をなくすボーダレスをじっくり味わえます」と話す、チームラボプラネッツTOKYO DMMの藤畑さん。大いに納得です。
ひっそりと燃える炎の小部屋
実は、この空間と接する別室にて、もう1つの作品が誕生しました。その名も「憑依する炎」。建物前にあった作品と同様、燃焼する様子が線の集合体によって描かれています。
作品の前にはベンチが用意され、じっくりと鑑賞することも可能。煌々と燃え続ける炎に想いと眼差しを馳せれば、終始無言のなかにも新たな感覚や気付きが起きるはず。
足もとを満たす水ですが、一年を通して、細かく温度設定が調節されています。夏は涼しく、冬は暖かく。人によっては足湯だと顔をほころばすのだとか。2作品は部屋が繋がっていますが、部屋ごとでも微妙に水温を変えており、五感へのアプローチにも抜け目がありません。
触れることで何かが始まる作品
自分が小さくなったのではないか、と疑ってしまうほど、巨大なボールに囲まれた空間は「意思を持ち変容する空間、広がる立体的存在 – 平面化する3色と曖昧な9色、自由浮遊」という作品。
人と接し、その衝撃によって球体は色を変え、その変化が周囲へと伝わっていくという、人と交流することで成り立つアートです。
色も原色の青・赤・緑のほか、グラデーションによって派生した曖昧な色(水草のこもれび・朝焼け・花菖蒲など)が加わり、水彩画のように視界を鮮やかに彩り、抽象画のように不思議な世界へ誘います。
球体は跳ねたり、浮かんだり、接近してきたりと、個々が好き勝手に動き回っていると思いきや、一斉に天井へ浮き上がったり。自由な動きに大人から子供まで夢中になれる作品です。
プラネッツに込めた想い
施設名に「プラネッツ」を起用したように、ここではアート作品を1つの惑星に見立て、惑星から惑星へとワープするような宇宙旅行を楽しんでもらうのも狙いの1つ。
そのため、宇宙を彷彿させるような闇の通路によって作品と作品の境界線がハッキリと分けられています。
さらに暗くすることで視覚に頼りがちな私たちの感覚をリセットし、嗅覚や触覚などを研ぎ澄ます役割も。宇宙をイメージした香りを開発したり、植物の芳醇なアロマを使ったりなど、作品に合わせて香りも1つ1つデザインするというこだわりです。
美しい、美しくない、すべてが作品
満天の花に囲まれた「Floating in the Falling Universe of Flowers」は、フィナーレに訪れる煌びやかな作品。
「季節の花々が一年を巡るように春夏秋冬の順に登場しますが、それも突然切り替わらないように、春の桜や菜の花が満開のなか、アジサイやひまわりなど初夏の花が少しずつ増えていくなど、徐々に移り変わるようにしています。また美しい部分だけではなく、茎や葉も大切な花の一部なので省くことはせず、咲いて枯れるまでの一連の流れが映し出されているんです」と、藤畑さん。
花を咲かすために、つぼみが付くように。種を残すために、花が枯れるように。栄枯盛衰、諸行無常だからこそ、いつまでも見ていたい気持ちにさせられるのかもしれません。
4月末までは、桜吹雪が天井全体を舞うという特別なひとときも。
今にぴったりな場所
季節限定の桜の演出に加え、新たな作品も加わった「チームラボプラネッツ TOKYO DMM」。コロナ対策として来場者数を通常の50%程度に留めているため、空いている状態で鑑賞できます。
チケットは公式ホームページより、日時を指定して購入。土日の14時前後がピークですが、平日の夕方だと人も少なく、のんびりと見て回れると言います。移動や行動が懸念される今だからこそ、宇宙旅行くらいの思い切った気分転換が丁度よいのかもしれません。
常に燃え続けるチームラボの炎。その炎は、情熱として人の心を焚きつけるのか、揺らぎとして人に束の間の安堵を与えるのか。どちらにせよ、火は花火やろうそくのように分けられるもの。私たちの胸にも灯った炎が、先が見えない明日を少しだけ明るく照らしてくれます。
<チームラボプラネッツ TOKYO DMMの基本情報>
住所:東京都江東区豊洲6-1-16
営業時間:
政府の緊急事態宣言の発出により、4月25日(日)より臨時休館中。
再開については、決定次第公式サイトにてお知らせ予定です。4月24日(土)から5月9日(日)まで
9:00~19:00 最終入場は閉館の30分前
*開館時間が変更になる可能性があります。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
定休日:不定休
アクセス:ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線「新豊洲駅」より 徒歩約1分
バス停「新豊洲駅」より徒歩約2分
https://planets.teamlab.art/tokyo/jp/